ペレス・イスラエル外相(当時)の言葉:「我々は孤独だ」

 私は、1987年から1990年まで在イスラエル大使館で勤務をしましたが、イスラエルでは欧米的世界観とは異なるユダヤ人から見た世界観に触れ、視野を開かれました。特に記憶に残るのは、ある歓迎晩餐会におけるイスラエルの大物政治家シモン・ペレス氏(当時、外相)のスピーチです。1988年宇野宗佑外相が日本国の閣僚として初めてイスラエルを公式訪問した際のものです。記憶によれば、スピーチの要旨は次の通りでした。

 ユダヤ民族は、欧州というキリスト教世界で長らく差別され迫害されてきた。ところが19世紀に民主主義が発展し国民国家が形成され、ユダヤ人もこれで欧州各国の一員、真の国民になれると期待した。しかし、期待は裏切られた。ユダヤ人差別と迫害はなくならなかった。(ドレフュス事件を想起せよ。)そして、ホロコーストである。ユダヤ人は欧州という土地にいながら、その一員として認められなかった。ユダヤ人は孤独である。

 日本人は、19世紀に西洋文明と欧米近代国家(=帝国主義国家)の脅威に直面して、西洋をモデルとした国家制度を構築して、西洋文明を取り入れて発展し、日清・日露の両戦争に勝利した。日本人は、これで欧米近代国家の仲間入りができたと考えた。しかし、欧米諸国は日本を同等の仲間とは認めなかった(含意は、人種差別)。その結果が、先の大戦である。日本は、西洋の外にいて西洋文明に加わろうとしたが拒否されたのである。日本人も孤独である。

 西洋文明が優勢な世界で、ユダヤ人は西洋文明の内辺にいながら拒否され、日本人は外辺からの西洋文明への参加を拒否された。我々は共に孤独である。(註:1988年当時は、ソ連社会帝国主義の凋落が明白になり、他方、中国共産党帝国の躍進が始まる前で、まだまだ欧米優位の世界でした。)(スピーチは、「従って、イスラエル、日本は協力する必要がある」と続くのですが、これは省略。)

 当時の私は、欧米的世界観に引きずられていましたので、このスピーチは実に新鮮に感じました(日本の学校教育で教える世界観は欧米的世界観の亜種ですし、その後、米国に留学しましたが当然のことながら欧米的世界観からは自由にはなりませんでした)。

【註:シモン・ペレスは、1923年ポーランドに生れ。1934年英領パレスチナに移住し、イスラエル建国運動に参加。1950年代に国防次官として国防軍建設に大きく貢献。1959~2007年まで国会議員。この間、外相、国防相などの要職を多数歴任し、首相を2度務める。2007~14年大統領。イスラエル建国と発展に貢献した超大物政治家。6か国語を話す軍事外交の専門家であり戦略家でした。】

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