警察が検察に送致した事件の起訴率が、ここ四半世紀の内に激減しています。検察統計から幾つか数字を示します。
2000年 2023年
〇 総数起訴率 53.9% 32.0%(起訴数23万8145人)
〇 殺人罪(未遂を含む)61.2% 27.4%(起訴数255人)
〇 傷害罪 68.1% 29.5%(起訴数1万0273人)
.
警察が事件として捜査を遂げて検察庁に送致した事件の起訴率の低下が目立ちます。総起訴率を見ると、現在、警察が捜査を遂げて送致した事件の内、3分の1しか起訴されていないのです。3分の2は起訴猶予です。これは異常なことではないでしょうか。
更に、殺人罪(未遂を含む)の起訴率の低下が注目されます。無罪判決が出て評価が下がるのを恐れる検察官が、殺人罪での起訴に消極的となっている姿が浮かびあがります。本来の殺人既遂を傷害致死罪で、殺人未遂は傷害罪にレベルを落として起訴をしたり、或いは起訴そのものを回避したりしている可能性が高いでしょう。(傷害致死罪の起訴率が低下していないのは、以前であれば殺人罪で起訴されていた事件が、一部、傷害致死で起訴されているためでしょう。傷害罪は毎年の起訴数が1万人を超えるので目立たないのですが、傷害致死罪の起訴件数はもともと少ない(2023年で83人)ので、殺人罪からの移行件数による押上げ効果が大きいと見られます。)
この文脈で見ると、2021年大分県の一般道で時速200キロ近くという無謀な速度で走行して死亡事故を起こした事件で、大分地検が当初、危険運転致死罪ではなく過失運転致死罪で起訴した(2022年)のも、例外ではなく、現在の検察の一般的姿勢の反映に過ぎないのではないかと思います。
国民は、検察庁の姿勢に注目する必要があります。