このトピックもインテリジェンス関連ではないのですが、最近注目の事件ですので、掲載します。
最近、闇バイトによる広域強盗(殺人)事件が注目されています。犯罪実行者をインターネット・闇バイトサイトで募集しているのです。これは特殊詐欺の実行者募集で使われている手口ですが、特殊詐欺の被害額は年間数百億円にも及んでいます。
インターネット闇バイトを使った犯罪によって、多くの被害者が生まれ、人まで死んでしまいました。また、軽い気持ちで犯罪に手を染め検挙されて、一生を台無しにする若者も多くいます。
これらの犯罪を未然に防ぐことはできないのでしょうか。実は、法律さえ改正すれば簡単に防止できるようになるのです。それは、米国の様に、囮(おとり)捜査を認め、詐欺や強盗や殺人などの犯罪についての共謀罪を制定すれば良いのです。今日(2023年1月29日)の朝のテレビ番組でも、米国人のデーブ・スペクター氏がなぜ囮捜査をしないのかと質問していました。その通りなのです。囮捜査と共謀罪を制定すれば、捜査官が一般人になりすまして闇バイトサイトに連絡をして片っ端から検挙できるのです。簡単です。
ところが、どこからも囮捜査と共謀罪を制定すべきであるという声は上がりません。何故でしょうか。以下は私の推測です。
警察は、①忙し過ぎて、外国の法制度を研究する人がいない。いくら何でもそれはないでしょう。そうすると、②囮捜査や共謀罪の必要性を述べると、法学者やマスメディアの袋叩きにあうので、言わない。
法学者は、①米国law schoolのcriminal procedure関係の教科書を読んだことがないので、米国の刑事司法制度の実態を正確に理解していない。(米国に限らず英独仏の刑事司法制度の運用実態も勉強していない。)又は、②今そこにいる犯罪の被害者や犯罪に手を染め傷つく若者よりも、人権が大切であり捜査当局に犯罪阻止のための手段(濫用される虞)を与えるべきではないと考えている。つまり、今そこにある被害よりも、抽象的な人権や濫用の虞の方が重要と考えている。本来であれば、インターネット・闇バイトサイトによる犯罪事象(人権侵害)に関しては、どのような法制度を構築すれば、一般人民の人権を過度に制限することなく、被害防止という潜在的被害者の人権保障を行えるのか、刑事司法学者こそが、提言をすべきでしょう。
(2023年2月1日追記)本日付『日本経済新聞』記事によれば、SNS上の「闇バイト」(犯罪勧誘)に対して、15都道府県警察が2021年1年間で警告1万2045件を発したそうです。2022年の全国集計は出来ていない様ですが、警視庁では警告件数が5割増しと増加しています。「闇バイト」による犯罪勧誘が隆盛を極めています。都道府県警察は頑張っているのですが、国家的な制度的対策が必要です。警察庁、そして刑事司法学者の奮起を期待しています。