報道によれば、2025年10月30日に木原官房長官から警察に対して、クマの駆除について早急に対応するように要請があり、漸く警察もクマの駆除に取り組むようです。これは政治家からの要請の有無に拘わらず、当然のことであり、むしろ遅きに失したとも言えるでしょう。
そもそも、全般的なクマ行政~自然保護と同時に国民生活に被害を及ぼさないようなクマの個体数管理など~は、警察の所掌の範囲外としても、クマが住宅地に出没するなどして、人の生命身体財産に危険を及ぼしている場合に、警察が対処するのは当然のことでしょう。その理由は次の通りです。
1 警察の責務
先ず、警察法第2条(警察の責務)で、「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、…公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務」としており、また、警察官職務執行法第4条(避難等の措置)では、「警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞のある…狂犬、奔馬の類等の出現…等危険な事態がある場合においては、…その場に居合わせた者…その他関係者に対し、危害防止のため通常必要と認められる措置をとることを命じ、又は自らその措置をとることができる。」と規定しています。つまり、クマが住宅地に出没するなどして、人の生命身体財産に危険を及ぼす場合に、その緊急事態に対処するのは本来の警察の責務です。
2 組織的適性
勿論、クマの駆除は狩猟家など警察以外の方が行ってもよいのですが、クマの駆除のためにはどうしても猟銃などの銃器の使用が必要となります。この銃器使用のためには、保管、使用訓練や駆除管理などの業務が必要となります。個別の自治体がこれに取り組むのは推奨すべきでしょうが、これを全て市町村の第一次任務として義務付けるのは負担が重過ぎるし非効率です。警察は、全国組織であり、銃器の使用管理にも適した組織であり、クマの駆除に警察が当たるのは、その組織の特徴から判断しても適切でしょう。勿論、警察も狩猟のノウハウを組織的に保有している訳ではないので、訓練や準備は必要ですが、これを行う組織としては、個別の市町村よりは組織的適性があると言えるでしょう。
3 警察にとっての利点
我が国の警察は、世界に類例のないほど軽武装です。我が国警察の制式拳銃の銃身は短く(=命中精度は低く)打撃力は小さく、他国の警察官に制式拳銃として見せるのが恥ずかしい程です。軽機関銃(機関拳銃)や自動小銃の保有数も多くはありません。このため、我が国の警察官の銃器、特に自動小銃やライフル銃の威力についての知識は不十分であり、銃器の扱いに慣れた犯罪者や戦時に予想される破壊活動と対峙するには力不足です。 (因みに、米国の警察は口径9mm乃至10mmの半自動式拳銃を標準装備し、弾丸の多くは制圧力強化のためホローポイント(致死率が高い)、且つ、勤務時には概ね30発以上を携帯しています。また、パトカーにショットガンを標準装備している警察も珍しくありません。)
そこで、クマ対策を契機に、全国の警察署にライフル銃やショットガンを配備して、全国の警察官が、その威力や取扱いに習熟しておくことは、治安維持においてもメリットがあるのです。この機会に、是非、ライフル銃やショットガンを大量に調達して、警察装備を充実して欲しいものです。