～大澤淳氏の誤解を生む国会参考人発言～
米国は、外国のハッカー集団等のサーバーに対して無害化措置を執った場合に、その措置を認めて、その目的と理由を説明しているのでしょうか。
現在、所謂サイバー対処能力強化法案等が国会に係属していますが、2025年3月28日の内閣委員会で、中曽根平和研究所の大澤淳氏が参考人として出席して誤解を生む発言をしていましたので、その誤解を指摘しておきます。
彼は、立憲民主党の市来伴子議員の質問に答えて、2018年に米政府がサンクトペテルブルグにあるサーバーに対して無害化措置を執った際には、（無害化措置の相互エスカレーションを防ぐために）、作戦実施後に作戦の目的と理由を説明した旨の発言をしました。
サンクトペテルブルグのサーバーに対する無害化措置とは、Synthetic Theology作戦と伝えられる作戦で、2018年米中間選挙に際して、ロシアによる選挙干渉を防ぐために、米サイバー司令部とNSA（国家安全保障庁）の合同チームが、サンクトペテルブルグのインターネット・リサーチ・エージェンシーのサーバーをインターネットから遮断する措置（無害化措置）を実施したことです。
しかし、私の知る限り、米政権はこのSynthetic Theology作戦を実行したことを正式には認めていません。米政府は認めていないことの証拠として、安易な方法ではありますが、ChatGPTで検索した結果（まあ、英語言語空間における常識）を示します。
【註１】米国のDefend Forward戦略に基づく「無害化措置」は、合衆国法典第10篇第394条（軍事的サイバー作戦）に基づいて行われています。同条第（a）項は、国防長官は、適切に権限行使を認められた場合には、米国及び同盟国を守るために、「サイバー空間における軍事的サイバー活動及び作戦」（「秘匿の活動や作戦」を含む）を行うことができ、これには「外国勢力による悪意あるサイバー活動対処」を含むとされています。
【註２】大澤氏は、以前にも産経新聞で「サイバー脅威に対して国外で対抗措置をとる行為」（未然に攻撃者のサーバー等に侵入し無害化したりすること）は、国際法上「軍隊」が実施することとされていると主張をしていますが、これも間違いです。米国が、国内法の都合上、軍事活動と定義しているのです。
＜ChatGPT検索結果＞
As of now, there is no public or official admission by the United States government regarding an operation called “Synthetic Theology” against the Russian Internet Research Agency (IRA). There’s also no verifiable public evidence or credible reporting that such an operation, under that name or nature, has occurred or been disclosed.
The Internet Research Agency, based in St. Petersburg, Russia, is widely known for its role in online influence operations, particularly during the 2016 U.S. presidential election. The U.S. government, especially through agencies like the FBI and Department of Justice, has investigated and indicted individuals associated with the IRA.
That said, cyber operations, especially those conducted by intelligence or military agencies, are often classified, and it’s not uncommon for details to emerge years later through whistleblowers, leaks, or declassifications. But as of this moment, nothing named “Synthetic Theology” has been officially acknowledged.